「ファイナンシャルプランナー」といっても実際には何ができるのでしょうか?
最近では雑誌やテレビでは家計診断をおこなっているファイナンシャルプランナーがいますが、家計の収支だけを見て評価やアドバイスが単純にできるものではありません。
あくまでファイナンシャルプランナーの知識のほんの一部に過ぎないのです。
「ファイナンシャルプランナー」を直訳すると「お金の計画を立てる人」になります。
ということは、家計の収支を評価する人ではなく計画を立てる人なのです。
では「お金の計画を立てる人」とはどこまで含まれているのでしょうか?
実は人生の中のお金に係ることすべてです。
ここではファイナンシャルプランナーのはじめの一歩としてファイナンシャルプランナーのできることできないことをわかりやすく説明していきます。
・ファイナンシャルプランナーって何するの?
・ファイナンシャルプランナーのできることって何?
・ファイナンシャルプランナーのできないことって何?
1.ファイナンシャルプランナーのできることって何?
ファイナンシャルプランナーの知識の範囲は広範囲になります。
- 家計管理
- 医療費や介護費用、年金などの社会保険
- 老後の生活設計
- 教育資金
- 住宅資金
- 生命保険や医療保険
- 税制
- 相続・事業承継
- 不動産
- 資産運用
このように日々生活していくうえで意識してお金を使っているもの、無意識のうちにお金を使っているもの、お金の使い方がよくわからないものまでさまざまです。
それぞれの内容についてわかりやすく説明していきましょう。
①家計管理
現在から将来に関する家計の管理になります。
ただし、食費を減らしましょうとかお小遣いを減らしましょうなどといった家計簿の見直しのようなことではありません。
ファイナンシャルプランナーは各家庭の家族構成、現状の貯蓄額やローン残高、将来かかるであろう教育資金や老後の年金に至るまで、さまざまな資金計画を基に貯蓄の方法や金額のアドバイスや保険やローンの見直しなどの家計の見直しを管理していきます。
②医療費や介護費用、年金などの社会保険
日本では「国民皆保険」と言って、すべての国民に社会保険制度が適用され最低限必要な保障を受けられます。
社会保険は以下の5つに分類されます。
- 公的医療保険
- 公的介護保険
- 公的年金
- 労災保険
- 雇用保険
ファイナンシャルプランナーはこれらの社会保険制度の知識を持っていますので、制度の説明や給付の内容・条件について相談が可能です。
③老後の生活設計
ニュースで老後までに貯蓄2000万円が必要と報道されましたが老後の生活のあり方によってどのくらいの資金が必要か異なります。
例えば定年後も住宅ローンの支払いが残っている人は年金だけでは生活できない可能性があります。
自営業の人は老後といっても働いているので必要な貯蓄額が変わってきます。
毎年旅行に行きたいと考えている人はもっと貯蓄額が必要になる可能性があります。
このように個人の環境によった老後の生活設計を提案していきます。
④教育資金
子供の教育資金は入学金や授業料だけではありません。
学校の教材費や塾の費用、通学費や一人暮らしが必要なった際の生活費も含まれます。
そこで教育資金の準備方法は以下のようにいくつかの方法があります。
・貯蓄
単に銀行に貯金するのではなく学資保険や一般財形貯蓄を利用する方法があります。
・教育ローン
教育ローンは銀行などの一般の教育ローンだけでなく国の教育ローンというものがあります。
・奨学金
無償の奨学金だけではなく無担保で卒業後に子供本人が返済する返済型のタイプも奨学金もあります。
・授業料の給付
家庭の収入によっては授業料の一部が免除になる場合があります。
このように教育資金は子供が教育を受けられるようにいくつかの制度がありますので、それらを提案していきます。
⑤住宅資金
住宅の購入については「人生の最大の買い物」と言われるぐらい大きなイベントの1つです。
住宅購入をする際の資金計画をアドバイスしていきます。
また住宅ローンを支払っている場合は借り換えの判断や繰り上げ返済のメリットデメリットもアドバイスしていきます。
⑥生命保険や医療保険
公的な社内保険では不足する資金を補うための保険についてアドバイスしていきます。
保険についてはライフプランを見直す上で非常に重要な部分です。
日々の生活ではあまり大きくないですが10年先を考えた時に保険の見直しによって家計が大きく改善する場合があります。
また、生命保険だけでなく各保険証書の内容から保障内容を説明し今後のライフプランで必要な保障を提案していきます。
⑦税制
サラリーマンの方はあまり意識していないかもしれませんが自営業の方や自分で確定申告をおこなっている人はなじみ深いと思います。
よって勝手に差し引かれるものと考えずに自分で管理するものと意識していくことが重要です。
例えば医療費控除は実際に払った金額ではなく全額負担した場合の合計金額が医療費控除の対象になります。
この「控除」というものを理解していくと支払いすぎている税金が戻ってくる可能性があります。
この税制に対する考え方をアドバイスしていきます。
⑧相続・事業継承
相続する資産なんてないなんて思っている人が大半だと思います。
ただ思い出してみてください。
祖父母が亡くなった際に両親や親せきなどの大人たちが子供たちがいないところで話し合っていませんでしたか?
相続に関しては資産をたくさん持っている人だけの問題ではありません。
生命保険がかかっていた借金があった葬式代を故人が自分で出すと言っていたけどおろせるのかなど考えなければいけないことをアドバイスしていきます。
事業承継については単純に代替わりをすればよいものではありません。
先代が亡くなってからでは多額の相続税がかかる可能性があり事業承継をスムーズにおこなうことを考えていかなければなりませんので事業の承継の方法についてアドバイスしていきます。
⑨不動産
最近は不動産投資が投資の中でも大きく取り上げられています。
しかしながら簡単に儲かる話はありません。
不動産を買う、売る、貸す、借りるから不動産登記や固定資産に係る税金などの知識も必要です。
このような不動産に係る基礎知識をアドバイスしていきます。
⑩資産運用
超低金利の時代が続き銀行の利息だけで生活できる時代ははるか昔です。
それでも日本の貯蓄文化は大きくかわらず半分近くの資金が貯蓄になっています。
最近はNISAやiDeCoといった初心者向けの資産運用から株式投資からFXやビットコインなど資産運用はさまざまな方法があります。
しかしながら資産運用についてきちんとリスクを理解していかないと退職金がすべてなくなるというとんでもないことになる可能性があるため資産運用についてアドバイスしていきます。
2.ファイナンシャルプランナーのできないことって何?
ここまで読んでみるとファイナンシャルプランナーにまかせておけばお金のことは全てオッケーのように感じるかもしれません。
しかしながらファイナンシャルプランナーは例えば税理士などの「士業」と呼ばれる独占業務となっている業種の専門領域の業務はできません。
ここではファイナンシャルプランナーと関連業法をわかりやすく説明します。
①税理士法
税理士の資格がない場合は、有料/無料問わず個別具体的な税務相談や税金の計算、確定申告の作成はできません。
②弁護士法
弁護士の資格がない場合、具体的な法律的判断を下すことはできません。
③司法書士法
司法書士の資格がない場合、土地や建物などの登記に関する手続きの代理をおこなうことはできません。
④社会保険労務士法
社会保険労務士の資格がない場合、社会保険関係書類の作成や手続きの代行をすることはできません。
⑤宅地建物取引業法
宅地建物取引業の免許も持っていない場合、土地や建物の売買や賃貸の仲介や媒介を業務にできません。
⑥保険業法
生命保険募集人の登録を受けていない場合、保険の募集や勧誘することはできません。
⑦金融用品取引法
投資助言や代理業の登録を受けていない場合、投資するタイミングなどの投資助言をすることはできません。
以上のように各資格がないと具体的な業務ができない場合がありますので注意が必要です。
3.こんな時はどうなの?
具体的な例を挙げてファイナンシャルプランナーのできることできないことをまとめました。
・金融商品取引業者の登録を受けていないFPのAさんは、特定銘柄について、顧客から株式投資のアドバイスを求められ、その株価チャートを示しながら投資のタイミングを有償で助言した。
→✕有償であれ無償であれ投資助言や代理業の登録を受けていない場合は投資助言はできません。
・生命保険募集人の登録を受けていないFPのBさんは、顧客からライフプランの相談を受け、老後資金を準備するための生命保険の一般的な活用方法を無償で説明した。
→〇生命保険の一般的な活用方法については有償であれ無償であれ説明できます。
・司法書士の登録を受けていないFPのCさんは、顧客から将来判断能力が不十分になった場合の財産の管理を依頼され、有償で当該顧客の任意後見受任者となった。
→〇有償であれ無償であれ任意後見受任者にはなれます。
・社会保険労務士の登録を受けていないFPのDさんは、顧客の求めに応じ、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給要件や請求方法を無償で説明した。
→〇有償であれ無償であれ年金の受給条件や請求方法の説明はできます。
・税理士の登録を受けていないFPのAさんは、顧客からふるさと納税に関する寄附金控除について相談され、所得税法や地方税法の条文等を示しながら一般的な説明をした。
→〇一般的な説明はできます。
・弁護士の登録を受けていないFPのBさんは、顧客からの要請に応じ、当該顧客を委任者とする任意後見契約の受任者となった。
→〇任意後見契約の受任者となれます。
・生命保険募集人の登録を受けていないFPのCさんは、ライフプランの相談に来た顧客に対して、生命保険の商品内容を説明した。
→〇商品内容の説明はできます。
・金融商品取引業の登録を受けていないFPのDさんは、顧客と資産運用に関する投資顧問契約を締結したうえで、値上がりが期待できる株式の個別銘柄を示し、その購入を勧めた。
→✕個別の銘柄を示して購入を勧めることはできません。なお、たとえ購入を勧めなくとも値上がりが期待できる株式を示しているのでこの行為が投資助言にあたります。
・弁護士の資格を有しないFPのAさんは、顧客から成年後見制度について相談を受け、法定後見制度と任意後見制度の違いについて一般的な説明をした。
→〇一般的な説明をしているだけなので、できます。
・税理士の資格を有しないFPのBさんは、顧客から所得税の医療費控除について相談を受け、実際に支払った医療費のうち、保険金などで補てんされる金額については医療費控除の対象とならないことを説明した。
→〇保険金と医療費控除の関係について説明しているだけなので、できます。
・社会保険労務士の資格を有しないFPのCさんは、顧客から老齢基礎年金の繰下げ受給について相談を受け、顧客の「ねんきん定期便」の年金受取見込額を基に、繰り下げた場合の年金額を試算した。
→〇年金の繰り下げ受給の年金額を試算しているだけなので、できます。
・金融商品取引業の登録を受けていないFPのBさんは、顧客から確定拠出年金の個人型年金(iDeCo)について相談を受け、iDeCoの運用商品の特徴について説明した。
→〇iDeCoの商品の特徴を説明しているだけなので、できます。
・税理士の資格を有しないFPのCさんは、顧客からふるさと納税について相談を受け、寄附金控除の仕組みについて説明した。
→〇寄付金控除の仕組みについて説明しているだけなので、できます。
・司法書士の資格を有しないFPのDさんは、住宅ローンを完済した顧客から、抵当権の抹消登記について相談を受け、申請書を作成して登記手続を代行した。
→✕申請書の作成と登記手続きの代行はできません。
・社会保険労務士の資格を有しないFPのBさんは、老齢基礎年金の受給要件や請求方法を顧客に説明した。
→〇一般的な年金の受給条件や請求方法を説明しているだけなので、できます。
・税理士の資格を有しないFPのCさんは、顧客である相続人の求めに応じて、被相続人の実際の財産の価額を基に具体的な相続税額を算出し、その内容を説明した。
→✕具体的に相続税額を計算することはできません。
・FPのDさんは、顧客から公正証書遺言の作成時の証人になることを求められ、証人としての欠格事由に該当しないことを確認して、証人として立ち会った。
→〇証人となることはできます。
・税理士の資格を有しないFPのAさんは、顧客から不動産の贈与契約書に貼付する印紙について相談を受け、印紙税法の課税物件表を示し、印紙税額について説明した。
→〇印紙税額について説明しているだけなので、できます。
・社会保険労務士の資格を有しないFPのBさんは、顧客から老齢厚生年金の繰下げ支給について相談を受け、有償で老齢厚生年金の支給繰下げ請求書を作成し、請求手続きを代行した。
→✕厚生年金の支給繰下げ請求書を作成と請求手続きの代行はできません。
・弁護士の資格を有しないFPのDさんは、顧客から相続開始後の配偶者の住居について相談を受け、民法の改正により2020年4月に新設される配偶者居住権の概要を説明した。
→〇配偶者居住権の概要を説明しただけなので、できます。
・顧客から投資信託について相談を受けたFPのAさんは、投資信託には元本保証および利回り保証のないことを説明した。
→〇投資信託の一般的な説明をしているだけなので、できます。
・税理士の資格を有しないFPのDさんは、顧客からふるさと納税について相談を受け、一定の条件を満たせば、確定申告をしなくても寄附金税額控除の適用が受けられるワンストップ特例制度があることを説明した。
→〇ふるさと納税の一般的な説明をしているだけなので、できます。
4.まとめ
ファイナンシャルプランナーの業務についてできることとできないことをまとめました。
皆さんもこれを機にぜひファイナンシャルプランナーを知っていただければ幸いです。