会社員に生命保険は必要?公的保障・勤務先制度・団信・貯蓄から考える

「会社員は公的保障があるから、生命保険はいらないのでは?」
「子どもがいるので、死亡保険には入っておいた方がよい?」
「住宅ローンの団信に加入しているので、生命保険を減らしてもよい?」
「保険料を払うより、貯蓄やNISAを優先した方がよい?」

生命保険について、このように迷っている会社員の方もいるのではないでしょうか。

会社員に生命保険が必要かどうかは、職業や年齢だけでは決まりません。

まずは、次の4つを確認することが大切です。

・公的保障
・勤務先の保障制度
・預貯金や投資資産
・住宅ローンの団体信用生命保険(団信)

これらを確認し、それでも不足する金額がある場合に、民間の生命保険で補うのが基本的な考え方です。

この記事では、会社員が生命保険の必要性を判断するための考え方を、死亡保障、医療保障、働けない期間への保障に分けて解説します。

※本記事は2026年8月1日時点の制度をもとに作成しています。公的保障の内容や受給要件は、加入している健康保険、年金記録、家族構成などによって異なります。実際に利用するときは、勤務先、加入している健康保険、日本年金機構などへご確認ください。

会社員だから生命保険が不要とは限らない

健康保険や厚生年金に加入している会社員には、病気やけが、障害、死亡などに備える公的保障があります。

勤務先によっては、休職中の給与補償、傷病見舞金、死亡退職金、弔慰金、団体保険などを利用できる場合もあります。

そのため、民間保険を検討する前に、すでに利用できる保障を確認することが大切です。

ただし、公的保障や勤務先制度があるからといって、すべての家庭で不足がなくなるとは限りません。

家族の生活を主に自分の収入で支えている場合、万一のことがあった後も、次のような支出が続きます。

・配偶者や子どもの生活費
・子どもの教育費
・住居の維持費
・固定資産税
・マンションの管理費や修繕積立金
・自動車の維持費
・葬儀などの一時的な支出

反対に、配偶者の収入、遺族年金、勤務先からの給付、預貯金などで生活を維持できる場合は、大きな死亡保障が必要ない可能性もあります。

大切なのは、生命保険に加入しているかどうかではありません。

万一のときに必要になる金額と、すでに準備できている金額を比べ、家計に不足があるかを確認することです。

生命保険を考える前に確認したい4つの備え

民間の生命保険を選ぶ前に、公的保障、勤務先制度、資産、団信の順に確認しましょう。

1.公的保障

会社員が確認したい主な公的保障は、次のとおりです。

起きたこと主な公的保障確認すること
医療費が高額になった高額療養費制度自己負担上限と制度の対象外になる費用
病気やけがで会社を休んだ傷病手当金支給要件、支給額、支給期間
一定の障害状態になった障害基礎年金・障害厚生年金初診日、保険料納付、障害状態などの要件
家計を支える人が死亡した遺族基礎年金・遺族厚生年金対象となる遺族や子どもの有無

高額療養費制度

高額療養費制度は、1か月に医療機関や薬局の窓口で支払う保険診療の自己負担額が、年齢や所得に応じた上限を超えた場合に、超えた金額が支給される制度です。

2026年8月からは月額の自己負担上限が見直され、新たに年間上限が設けられています。2027年8月には、所得区分の細分化も予定されています。

以前に自己負担額を確認した方も、現在の上限を加入している健康保険で確認しましょう。

一方、次のような費用は、高額療養費制度の対象にならないことがあります。

・差額ベッド代
・入院時の食事代
・先進医療の技術料
・自由診療
・通院時の交通費
・入院中の日用品代

医療保険の必要性を考えるときは、保険診療の自己負担額だけでなく、制度対象外の費用や休職による収入減少も確認する必要があります。

傷病手当金

健康保険の傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けず、勤務先から十分な給与を受け取れない場合などに支給されます。

主な要件には、連続する3日間を含めて4日以上働けないことなどがあります。支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。

ただし、給与の全額が補償される制度ではありません。

毎月の生活費、住宅ローン、教育費、保険料などを確認し、傷病手当金を受け取っても毎月いくら不足するのかを考えましょう。

傷病手当金の支給要件や金額は、加入する健康保険や給与の支給状況によって確認が必要です。

障害年金

病気やけがによって一定の障害状態になった場合は、障害基礎年金や障害厚生年金を受け取れる可能性があります。

ただし、病名や「働けない」という状態だけで、受給が決まるわけではありません。

初診日、保険料の納付状況、障害認定日における状態など、複数の要件があります。

厚生年金加入中に初診日がある場合でも、障害の状態や保険料納付要件などを満たす必要があります。

遺族年金

会社員が死亡した場合、一定の要件を満たす遺族は、遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。

受け取れる年金の種類や金額は、次の条件などによって変わります。

・亡くなった方の年金加入記録
・配偶者や子どもの有無
・子どもの年齢
・遺族の年齢
・生計を維持されていたか

遺族基礎年金は、原則として一定年齢までの子どもがいる配偶者または子どもが対象です。

「会社員なら遺族年金で十分」と一律に考えず、自分の家庭ではどの制度が対象になるか確認しましょう。

2.勤務先の保障制度

会社員は、公的保障だけでなく、勤務先独自の制度を利用できる場合があります。

就業規則や福利厚生ガイドを確認し、次の制度がないか調べてみましょう。

・休職期間中の給与補償
・有給休暇や積立休暇
・傷病見舞金
・死亡退職金
・弔慰金
・会社が契約する団体保険
・企業年金
・復職支援制度

勤務先の制度は会社によって異なります。

同じ年収や家族構成でも、勤務先の保障が充実している人と、ほとんどない人では、民間保険で準備する金額が変わります。

また、転職や退職によって利用できなくなる制度もあります。

現在利用できる保障だけでなく、退職後も継続する保障かどうかも確認しましょう。

3.預貯金・投資資産

預貯金や投資資産も、病気や死亡などに備える方法の一つです。

ただし、資産の合計額だけでは判断できません。

次のように、使う目的や時期を分けて確認します。

・普通預金など、すぐに使えるお金
・定期預金など、解約手続きが必要なお金
・NISAなど、価格変動のある投資資産
・教育費として準備しているお金
・老後資金として長期運用しているお金

NISAで保有する投資信託も、必要になれば売却できます。

しかし、相場が下落している時期に売却すると、予定していた金額を確保できない可能性があります。

医療費や収入減少に対応するために資産を取り崩すことで、教育費や老後資金の準備に影響することもあります。

「資産があるから保険は不要」と決めるのではなく、緊急時に使える現金と、長期的な目的で保有する資産を分けて考えましょう。

4.住宅ローンの団信

団体信用生命保険(団信)は、住宅ローン契約者に所定の保険事故が発生した場合に、支払われる保険金を住宅ローン残高の返済に充てる仕組みです。

一般的な団信では死亡などが保障対象となり、疾病保障付き団信では、がん、急性心筋梗塞、脳卒中、介護などが対象となる場合があります。

ただし、保障対象や支払条件は、金融機関や契約内容によって異なります。

次の内容を確認しましょう。

・誰が団信へ加入しているか
・どのような状態が保障対象になるか
・住宅ローン残高の全額と一部のどちらが保障されるか
・疾病保障の支払条件
・保障が終了する年齢
・免責事項
・ペアローンの場合、どちらの債務がなくなるか

団信によって住宅ローンが完済されても、遺族の生活費や教育費まで支払われるわけではありません。

団信は住宅ローン残高への保障、民間の死亡保険は遺族の生活費などへの保障として、役割を分けて考える必要があります。

死亡保障・医療保障・働けない期間への保障を分けて考える

「保険」と一つにまとめると、何のために、いくら必要なのかが分かりにくくなります。

死亡保障、医療保障、働けない期間への保障を分けて確認しましょう。

死亡保障

死亡保障は、主に残された家族の生活を維持するためのものです。

確認する項目は、次の2つに分けられます。

死亡後に必要になるお金

・遺族の生活費
・子どもの教育費
・住居費や住宅の維持費
・葬儀などの一時的な費用
・そのほかの将来支出

死亡後に受け取れる・使えるお金

・遺族年金
・配偶者の収入
・死亡退職金や弔慰金
・預貯金
・現在加入している生命保険
・団信によって返済不要になる住宅ローン

「子どもがいるから3,000万円必要」といった一律の金額で判断することはできません。

家族構成、生活費、教育方針、配偶者の働き方、住宅ローン、資産状況によって必要額は変わります。

医療保障

医療保障を考えるときは、入院日数や手術費だけでなく、家計全体への影響を確認します。

・高額療養費制度を利用した後の自己負担
・差額ベッド代や食事代などの対象外費用
・通院や家族の交通費
・家事や育児を外部へ依頼する費用
・休職による収入減少
・手元資金で対応できる金額

医療費を預貯金で負担できる家庭もあれば、貯蓄を大きく減らすことを避けるために医療保険を利用したい家庭もあります。

必要な金額だけでなく、「手元資金をどこまで減らしてもよいか」という価値観も判断材料になります。

働けない期間への保障

病気やけがが長引いた場合は、治療費よりも収入減少が家計に大きく影響することがあります。

次の内容を確認しましょう。

・傷病手当金の見込額
・勤務先の給与補償
・休職できる期間
・配偶者の収入
・毎月の生活費
・住宅ローンの返済額
・教育費
・手元資金で対応できる期間

たとえば、公的保障を受け取った後も毎月10万円不足する場合、手元資金が300万円あれば、単純計算では30か月分に相当します。

ただし、医療費や一時的な支出も発生する可能性があるため、生活費だけで判断することはできません。

民間の就業不能保障を検討するときは、支払対象となる状態、免責期間、精神疾患の扱い、保障期間なども確認しましょう。

死亡保険の必要保障額を考える方法

死亡保険の必要保障額は、次の考え方で整理できます。

遺族に必要なお金-すでに準備できているお金=民間保険で補う必要保障額

遺族に必要なお金

・遺族の生活費
・子どもの教育費
・住居費や住宅の維持費
・葬儀などの一時費用
・そのほかの将来支出

すでに準備できているお金

・遺族年金
・配偶者の収入
・死亡退職金や弔慰金
・預貯金
・既存の生命保険
・団信によって返済不要になる住宅ローン

たとえば、住宅ローンが団信で完済される場合、毎月のローン返済はなくなる可能性があります。

しかし、持ち家であっても固定資産税や修繕費は残ります。

マンションの場合は、管理費、修繕積立金、駐車場代などが続くこともあります。

反対に、配偶者の収入、遺族年金、預貯金で生活費や教育費を賄える場合は、大きな死亡保障が必要ない可能性があります。

必要保障額は、一度計算したら終わりではありません。

子どもの成長、住宅ローン残高、貯蓄、配偶者の収入などによって変化します。

生命保険が必要になりやすい会社員

次のような会社員は、死亡保障や収入減少への保障に不足が生じやすい傾向があります。

・自分の収入で家族の生活を主に支えている
・子どもが小さく、今後の教育費負担が大きい
・配偶者の収入だけでは生活を維持しにくい
・預貯金で長期間の生活費を賄えない
・勤務先の死亡退職金や休職制度が少ない
・団信で住宅ローンがなくなっても生活費が不足する
・病気やけがで働けない場合の家計余力が少ない
・毎月の固定費が高く、収入減少への対応が難しい

これらに該当するからといって、必ず保険へ加入する必要があるとは限りません。

公的保障、勤務先制度、現在の保険、資産を確認したうえで、具体的な不足額を計算することが重要です。

保障を減らせる可能性がある会社員

次のような変化があった場合は、以前より必要保障額が小さくなっている可能性があります。

・子どもが独立した
・住宅ローン残高が減った
・団信の保障内容が充実した
・預貯金が増えた
・配偶者の収入が増えた
・勤務先の保障制度を確認できた
・退職後の生活費や年金の見通しが立った

ただし、「保障を減らせる可能性がある」ことと、「すぐに解約してよい」ことは同じではありません。

生命保険を解約した後、健康状態によっては新しい保険へ加入しにくくなる場合があります。

見直すときは、現在の契約について次の内容を確認しましょう。

・保障内容
・保険期間
・更新時期
・更新後の保険料
・解約返戻金
・特約の支払条件
・保障が終了する年齢

新しい保険へ加入する場合は、新しい契約が成立したことを確認する前に、現在の契約を解約しないよう注意が必要です。

住宅購入後は団信と生命保険を一緒に確認する

住宅ローンを借りたときは、生命保険を見直す一つのタイミングです。

団信によって住宅ローン残高がなくなるのであれば、死亡後に必要な住居費が以前より減る可能性があります。

一方で、次の支出は残ります。

・遺族の生活費
・教育費
・固定資産税
・一戸建ての修繕費
・マンションの管理費や修繕積立金
・自動車費用
・老後資金

また、疾病保障付き団信に加入していても、民間の医療保険やがん保険と同じ保障とは限りません。

団信は住宅ローン残高を減らす、またはなくすための保障であり、治療費や生活費を現金で受け取れるとは限らないためです。

私自身も、現在も変動金利で住宅ローンを返済しながら、がん保障付きの団信に加入しています。

団信があるから安心と考えるだけでなく、

・どの状態になったときに保障されるのか
・住宅ローン残高の全額が対象になるのか
・民間保険と保障が重複していないか
・保障されても生活費に不足が残らないか

を確認することが大切だと感じています。

住宅ローンを借りる前に、家計に無理のない借入額を確認したい方は、次の記事も参考にしてください。

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生命保険を見直すタイミング

生命保険は、定期的に変更しなければならないものではありません。

ただし、家族構成、収入、資産、住宅ローンなどが変わったときは、必要保障額が変化していないか確認する機会になります。

主なタイミングは次のとおりです。

・結婚したとき
・子どもが生まれたとき
・住宅ローンを借りたとき
・転職や退職をしたとき
・収入が大きく変わったとき
・子どもが独立したとき
・預貯金が大きく増減したとき
・保険の更新時期が近づいたとき

ライフイベントがあるたびに契約を変更する必要はありません。

現在の保障が、その後の家計状況に合っているかを確認することが大切です。

生命保険料控除だけで加入を決めない

生命保険、介護医療保険、個人年金保険については、一定の条件を満たすと生命保険料控除を利用できます。

生命保険料控除は、支払った保険料がそのまま戻る制度ではありません。

所得税や住民税を計算するときに、一定額を所得から差し引く制度です。

節税効果だけを理由に保険へ加入すると、税負担の軽減額よりも多くの保険料を長期間支払うことになります。

最初に必要な保障を確認し、その結果として生命保険料控除を利用できる場合がある、と考えましょう。

自分で確認するチェックリスト

現在の保険が自分の家計に合っているか、次の項目を確認してみてください。

死亡保障

□ 誰のための保障か説明できる
□ 死亡保険金額を把握している
□ 遺族年金の対象になるか確認した
□ 配偶者の収入を確認した
□ 勤務先の死亡退職金や弔慰金を確認した
□ 子どもの教育費を考慮した
□ 団信でなくなる住宅ローン残高を確認した
□ 住宅ローン以外に残る住居費を確認した

医療・収入減少への保障

□ 高額療養費制度の概要を確認した
□ 差額ベッド代など対象外の費用を確認した
□ 傷病手当金の対象になるか確認した
□ 勤務先の休職制度を確認した
□ 手元資金で生活費何か月分を賄えるか確認した
□ 長期間働けない場合の住宅ローン返済を確認した
□ 医療保険や就業不能保障の支払条件を確認した

現在の保険契約

□ 毎月の保険料総額を把握している
□ 保険期間と更新時期を把握している
□ 更新後の保険料を確認した
□ 主契約と特約の内容を区別できる
□ 保障が終了する年齢を把握している
□ 団信やほかの保険との重複を確認した
□ 保険料が貯蓄やNISAを圧迫していないか確認した

確認できない項目が多い場合は、新しい保険商品を探す前に、現在の保障内容と家計全体を整理することから始めましょう。

初めてFPへ相談するときの準備や当日の流れは、次の記事で詳しく解説しています。

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保険だけでなく家計全体を整理したい場合

生命保険が必要かどうかは、保険だけを見ても判断できません。

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まとめ

会社員には、公的保障や勤務先制度があります。

しかし、それだけで家族の生活費、教育費、住宅の維持費、収入減少などをすべて賄えるとは限りません。

生命保険を考えるときは、次の順番で確認しましょう。

  1. 公的保障を確認する
  2. 勤務先の制度を確認する
  3. 緊急時に使える預貯金を確認する
  4. 団信の保障内容を確認する
  5. それでも不足する金額を計算する
  6. 不足する期間と金額に合った備えを考える

生命保険は、多ければ安心というものではありません。

反対に、公的保障があるから不要と一律に判断することもできません。

死亡保障、医療保障、働けない期間への保障を分け、住宅ローン、教育費、老後資金、資産形成とのバランスを確認することが大切です。

すでに加入している保険がある場合は、すぐに解約するのではなく、現在の保障内容と必要保障額を確認してから判断しましょう。

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